山に囲まれ穏やかな空気が流れる平戸市無代寺町。夏の日差しも和らいだ8月の終わり、アスパラガスの生産に励む若手生産者の乾史弥さんの元を訪ねました。乾さんは、平戸市でもまだ珍しい、都会から移住してきた生産者さんです。どのような経緯や思いで、アスパラガスの生産に携わることになったのか、興味津々、お話を伺ってきました。 乾さんが生産しているグリーンアスパラガスは、2月から10月にかけて収穫します。乾さんの広さ約21aのハウスは、完成したのが去年の12月なので、実際の収穫となるのは今年が初めてです。 「まず土を耕すことから始めました。粘土質の土が固くて、耕運機の刃が何度も折れて苦労しました。それでも9月に作業を始めて12月にはハウスも完成し、設備も一通り揃いました。部会をはじめとした、周りの方々のおかげです」と謙虚に話す乾さん。 実際に、アスパラガス生産者として独立できたのは、県の補助事業の助けや、部会長をはじめとする「平戸アスパラガス部会」の方々や、地域の方々のサポートがあってのことのようです。 「実はもともと農業に興味があったわけではなく、田舎暮らしを実現させるための手段で農業を選びました。会社勤めは考えてなかったので、漁業と農業の二択でした。船酔いが心配だったので、結果農業に……」。 大阪出身の乾さん。もともと、田舎暮らしに強い憧れを持っていたとのことです。大学時代に九州各地を放浪し、平戸の川内峠で見た星の美しさが決め手となり、田舎暮らしの舞台を平戸に選びました。それかく約2年間の研修を経て、アスパラガス農家として独立しました。 「アスパラガスの生産を選んだのは、平戸アスパラガス部会の部会長さんの存在も大ら29歳の時に実際に移住し、農業を学ぶべきかったです。部会長のアドバイスにより、将来いくら稼げるかなどの、具体的なビジョンを持つことができました。いつも気にかけていただき、大変ありがたいです」。乾さんの話しぶりから、部会長の存在の大きさが感じられました。実際、部会長を頼りに、現在多くの若者が他県から独立を目指して集まっている模様。 「移住組の先駆けですね」という問いかけには、「そうですかねぇ」と乾さんは気負った様子は無く、「釣りが趣味で、仕事の合間は釣りばかりしています。平戸に来てから、体も丈夫になりました!」と、いたって自然体です。 とはいえ、「現在は1日に5キロほどの出荷量ですが、いずれは年間3トンの出荷量を目指し頑張っています。次々に生えてくるアスパラガスの収穫は休む暇もなく、特に夏場は暑くて大変ですが、たくさん収穫できるとやはり嬉しいです」と生産者としての力強い言葉も聞けました。「今後、台風対策など、まだまだ勉強すべき課題もいっぱいです」と真摯な様子も伺えます。 現在、乾さんは、平戸へ来てから知り合ったパートナーと共に、二人三脚でアスパラガスの生産を頑張っています。「この先も、ずっと一緒にやっていけたらいいなあ」と話す、照れたような優しい笑顔が印象的でした。 いつまでも自然体で、若者が憧れる新しいライフスタイルのお手本となるような存在になることを期待しています。ふるさとの旬を訪ねます。アスパラガス第11回さいかい魅緑探訪どこまでも広がる平野の中に、乾さんが栽培するハウスが並びます日光の当たり具合の調整や病害虫の予防のため、伸びすぎた枝を切りそろえます収穫されたばかりのアスパラガス。「まだまだ細いです」と乾さんハウスの中は、アスパラガスの葉や枝がいっぱいに生い茂っています水やりは、根元に張った専用チューブより行われますハウスからの眺めは、山が並び雄大ですアスパラガスは茎が20センチほど伸びたら収穫します【取材協力】アスパラガス農家乾 史弥さん(平戸市)田舎暮らしに憧れ、大阪から平戸へと移住してきました。昨年アスパラガス農家として独立し、しっかりとした生活の基盤を作り上げようと、日々頑張っています。今ではすっかり平戸に馴染んだ様子。イヌイフミヤ周囲の協力で実現した、憧れの田舎暮らし
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