周囲の協力で実現した、憧れの田舎暮らし

 乾さんが生産しているグリーンアスパラガスは、2月から10月にかけて収穫し、約2反1畝の広さのハウスで栽培されています。去年の9月にハウスの設備に取り掛かり、完成したのが12月なので、実際の収穫となるのは今年が初めてです。
 「まず土を耕すことから始めました。粘土質の土が固くて、耕運機の刃がなんども折れて苦労しました。それでも9月に作業を初めて、12月にはハウスも完成し、設備も一通り揃いました。部会をはじめとした、周りの方々のおかげです」と謙虚に話す乾さん。

 実際に、アスパラ生産者として独立できたのは、県の補助金の助けや、「平戸アスパラ部会」の部会長をはじめとする、周りの人々のサポートがあってのことのようです。
 「実はもともと農業に興味があったわけではなく、田舎暮らしを実現させるための手段で農業を選びました。会社勤めは考えてなかったので、漁業と農業の二択でした。船酔いが心配だったので、結果農業に…」。
大阪出身の乾さん。もともと、田舎暮らしに強い憧れを持っていたとのことです。大学時代に九州各地を放浪し、平戸の川内峠で見た星の美しがきめてとなり、田舎暮らしの舞台を平戸に選びました。それから29歳の時に実際に移住し、農業を学ぶべく約2年間の研修を経て、アスパラ農家として独立しました。
「アスパラの生産を選んだのは、平戸アスパラ部会の部会長さんの存在も大きかったです。部会長のアドバイスにより、将来いくら稼げるかなどの、具体的なビジョンを持つことができました。いろいろと面倒見がよく、いつも気にかけていただき、大変ありがたいです」。乾さんの話しぶりから、部会長の存在の大きさが感じられました。実際、部会長を頼りに、現在多くの若者が他県から独立を目指して集まっているもよう。

 「移住組の先駆けですね」という問いかけには、「そうですかねぇ」と乾さんは気負った様子は無く、「釣りが趣味で、仕事の合間は釣りばかりしています。平戸に来てから、体も丈夫になりました!」と、いたって自然体です。
 とはいえ、「現在は1日に5キロほどの出荷量ですが、いずれは年間3トンの出荷量を目指し頑張っています。次々に生えてくるアスパラの収穫は休む暇もなく、特に夏場は暑くて大変ですが、たくさん収穫できるとやはり嬉しいです」と生産者としての力強い言葉も聞けました。「今後、台風対策など、まだまだ勉強すべき課題もいっぱいです」と真摯な様子も伺えます。
 現在、乾さんは、平戸へ来てから知り合ったパートナーと共に、二人三脚でアスパラの生産を頑張っています。「この先も、ずっと一緒にやっていけたらいいなあ」と話す、照れたような優しい笑顔が印象的でした。
 いつまでも自然体で、若者が憧れる新しいライフスタイルのお手本となるような存在になることを期待しています。

Jasmile Vol.11(2021 Autumn)掲載