凛と輝く花になれ 新米農業女子の挑戦

 慶子さんは昨年6月に新規就農したばかり。今年の夏が2度目の収穫です。日当たりの良い40アールの畑に小菊6万株を定植。そこからそれぞれ3本の茎を伸ばして育てる「3本立て」の栽培で、1年目から18万本もの菊を収穫し、全国各地へ出荷されました。
 もともと医療やアパレルなどの仕事をしていた、地元鹿町出身の慶子さん。仕事や地元の知り合いを通じて花に関わる機会があり、次第に自分で育ててみたいと思うようになったそう。「好きなことはとことん突き詰めるタイプ」という彼女は、25歳の頃に就農を決意。県の新規就農相談センターで基礎を身につけ、花農家での実践的な学びを経て、昨年自分の畑での栽培をスタートさせました。

 小菊の栽培で求められるのは、花の美しさだけではありません。青々とした健康的な葉に、長くまっすぐ伸びる茎も重要な要素。そのため畑には等間隔にパイプを立ててネットを張り、風などで茎が倒れないよう支えます。
 また葉が生い茂ると湿気がこもりやすく、虫が好む環境をつくってしまうので、土に近い部分の葉は手で取り除かなければなりません。
「植物も生き物。生命力や土壌にも影響するので、農薬の使用は最小限にしたい」と、株元にはマルチシートを張って雑草対策をしています。どうしても伸びてくる畝間の雑草は、草刈機でこまめに刈るなど、手間ひまかけた栽培です。

 「私たち農家は、実は菊の咲いているところを見ることができません。つぼみの段階で収穫して、お客様の元で一番きれいに咲くように出荷しているからです」
 花の収穫はスピードが命、1年間の成果が試されるときです。日が昇ると気温が上がってしおれてしまうので、勝負は早朝と夕方のみです。茎を一気に手で折るように収穫する作業は「1列を何分以内で」と自分で目標を定めて素早く行います。高品質の小菊を届けるため、腱鞘炎になりながらも、すべて手作業での収穫にこだわっているそうです。
 これからもますます高品質の小菊の栽培を目指すという彼女ですが、同時に耕作放棄地での栽培や、子ども向けの収穫体験プログラムなど、新しいことにもチャレンジしたいと目を輝かせます。
 やる気に満ちた笑顔は、まさに凛と咲く小菊のようでした。

Jasmile Vol.10(2020 SUMMER)掲載